2013年11月09日
シンドウミンダー(Sin Taw Min Thar)
10月30日(水)
全身がだるい。体のあちこちが痛い。水曜日の筋肉疲労は相も変わらず強烈だ。
本日の稽古はシンドウ・ミンダー。正確にはシンドウ・ミンダーのショート・バージョン。新しい踊りである。
午前中のクラスが終わって、先生を待っている間、余程疲れていたのか、風邪気味なのか、壁にもたれて座ったまま眠ってしまっていた。
「寝てたの?」と訊かれ、「ちょっと疲れてるのかも・・・・」と答えると、「体調悪いの?大丈夫?踊れる?」と心配はしてくれたが、ここで手加減をしてくれるほど先生は甘くはない。
シンドウ・ミンダーの振り付けも今まで通り、きっかり一日で習い終えた。
「調子が悪いなら無理しないで。電話を掛けてくれればいいことだから、こういう時はこれから、稽古を休んでもいいんだからね」とも言ってくれたのだが、「左右8回のべーシュエが終わった後、レッナウッピッが入るでしょ、あれ本当は、カビャーロッで踊るのと同じように、肩と膝を着けるんだよ。アマ、調子が悪いから言わなかったけど」とも言われてしまった。
言われた以上、と言うか、聞いてしまった以上、ここで手を抜いては女が廃る。いや、女はどうでもいいが、私が廃る。
気合を入れ直し、基本通りにレッナウッピッを踊って見せると、「そうそうそう。バディータは軽く踊ることが多いけど、シンドウ・カの振り付けはカビャー・ロッと同じのが多くて簡単でしょ。簡単だけど、その分、きちんと踊らないと綺麗じゃない。レッナウッピッだけじゃなくて、アヨウッレッもジンヨォダウンレッピッも同じだよ。ちゃんとアコェ・ジン(基本姿勢)で踊ってね」と満足気に頷く先生。
膝が軋んで思わず、「いてててて・・・・」と呻き声が洩れたが、しかし、墓穴だろうが何だろうが、やってやるとも、やって見せようじゃないの。
だが、まあ、こんな感じで、気力だけは十分なので気持ちは先走るのだが、残念ながら脳と体が付いては来ない。
やりたくても出来ない事だらけのミンダー・アカ、シンドウ・ミンダーもその例には洩れず、オリジナルのエンディングはジャンプしながら一回転し、ストンッと床に座る「ミンダー落ち」だが、先生が私のレベルに合わせて変えてくれた振り付けは、床を転がる決めポーズである。
床を転がって決めポーズを取るパターンも「落ち」と呼ぶようだが、エンディングに限らず、ミャンマー・ダンスではターンはあまり使わない代わりに床をゴロゴロと転がる振り付けが多い。
これは舞台設営の違いから来る演出の違いのような気がする。
伝統的なザッ・ポェのステージはそんなに高さがないし、地面に座った観客との距離も近いので、目の前で回転するなら、寝転んだ方が上下の幅が出てインパクトがあるし、観客との距離がより縮まる。
跳び上がったかと思えば(これが半端な高さではない)床をゴロゴロと転がって、呆気に取られて見ていると目の前にミンダーの顔が来て、至近距離でにっこりと笑い掛けられたりするのだから、ハートをギュッと鷲掴みにするオイシイ演出なのだ、これは。
この床をゴロゴロと転がる振り付け(略して「床ゴロ」か)だが、転がり方には幾つか種類がある。
シンドウ・ミンダーのエンディングは肩から転がる。6拍の短いアピェーハンラとのコンビネーションである。
ターヤ・ラパのエンディングも床を転がるが、こちらは基本型と全く同じで、16拍のアピェーハンラと腕から転がるもののコンビネーション。
サゴォワインは腰で転がるし、一度しかやったことはないが、でんぐり返し様のものもある。
右に転がり、左に転がり、ジィ~ン!でフィニッシュの振り付けは、王道なのか、よく見るエンディングだが、この「床ゴロ」、見た目はどうと言うこともないのだが、やってみると、・・・いや、やってみてもどうと言うこともないのだが、でも、体中が痣だらけになる。
シンドウ・ミンダーは右肩から床を転がるので、右肩と、そして何故か左肘に擦り傷付きの青痣が出来ていた。
腰で転がれば腰に青痣が出来るし、腕を着いて転がれば腕に痣が出来る。「ミンダー落ち」をすれば足首に青痣が出来、膝は常に痣になっているので、ラウェイのキックで出来る脛の痣を合わせると、もう、比喩でも大袈裟でもなく、体中、特に足は、何処も彼処も痣だらけである。
打ち身は痛むし、体がギシギシするのでストレッチを入れていたら、「疲れてるとは思うけど、来月からは彼(お兄ちゃん先生1号)に稽古を頼むから、今日中にフレームだけは終わらせておかないと。もう1回踊れる?」と先生。
勿論、私に否はない。だが、この「もう1回踊れる?」、その後、何度も繰り返された。
勿論、私に否はないのだが、しかし、新しい振り付けを入れると、心太のように、古い振り付けが零れて行く。
疲れもあるが、来週からは先生がいないと思うと何処かしら緊張が弛むのか、自分でも集中力に欠けていると思う。
その上、まだ決定ではないそうだが、先生、政府の奨学金で韓国の大学へ2年半くらい、コレオグラフィ(Choreography)の研修に行くかも知れないと言う。
「はっきりしてなかったから、まだ、アマには言ってなかったけど」と言っていたが、そう言えば、申請を出しているという話は以前にも聞いている。その時は気になっていたのだが、その後は忘れてしまっていただけの話である。
その時の申請が受理されるかどうかが12月に判るらしい。受理されれば先生は、早々に韓国に赴くことになるのだそうだ。
衝撃の事実に動揺して、余計に振り付けが覚えられない。
先生のことだから、代わりの先生はちゃんと紹介してくれると思うが、何だかもう、これからどうすりゃいいんだと、迷子の気分である。
昨日、この先生について行こうと決めたのに、今日、もう、サヨウナラの話とは、「豆狸だしなぁ」などと我が儘を言っていたから罰が当たったのか、それとも、彼は私の本当の師匠ではありませんよという天の啓示なのか・・・・・・・・
ところで、この研修の話で始めて知ったのだが、先生の専門は踊りではなく振り付けなのだそうだ。
それでね、成程ね、だからいとも簡単に、私のレベルに合わせて振り付けを変えてくれちゃう訳ね、と納得が行った。
4、5回、或いはもっと少ない回数でも、試してみて私が踊れないとなると、先生は直に振り付けを変えてしまうのだが、実は私、そうやって易しい振り付けに変えられるのが嫌いである。
出来もしないくせに癪に障って、「いつか絶対、オリジナルより難しい振り付けを踊れるようになってやる!」と、見果てぬ野望を抱いてしまうのだが、シンドウ・ミンダーは先生が急いだせいもあって、三ヵ所も振り付けが変わっている。
そんなこんなで後半はちょっとヤケ気味、カラ元気で体力を使い切ってしまった今日の稽古だが、不思議なもので、こんな状態でも踊りの練習をするのは純粋に楽しい。
カビャー・ロッで習った型はこんな風に組み合わせるんだと興味深いし、どうやって踊っているのだろうと感心して観ていたミンダーの踊りが、一つ一つ、ゆっくりと解けてくるようで感慨も深い。
「アマ、凄く疲れてるみたいだし、今日はもう、お終いにするね」と、珍しく時間通りに稽古を終えた先生だが、「でもアマ、踊ってると楽しそうだよね」と付け加えて笑った。
「カビャー・ロッとバディータの3曲、全部、綺麗に踊れるように頑張って。特にマガイ、絶対に忘れないで。マガイはアマに好く似合うから、衣装着けて、アクセサリー着けて、人前で踊って見せられるといいね」
そう帰り掛けに言われて、先生がマガイに拘っていた理由が解った。
だから、あんなにしつこく・・・、いえいえ、一生懸命教えてくれたのかと嬉しかったし、改めて頑張らなきゃと思った。
ミャンマー・ダンス、この調子では、まだまだ止められそうにない。自分でも納得の行く踊りが踊れるようになるまでには、少なくとも数年が掛かりそうだ。
先生は韓国に行ってしまうのかも知れないが、習い事に関しては気の長い私のこと、きっと先生がミャンマーに戻る頃までなら、ミャンマー・ダンスを続けているに違いない。
その頃には違う先生を師匠と呼んでいるのかも知れないけれど、出来ることならもう一度、先生に踊りを見て貰いたいと思う。
何せ、「綺麗に踊れるようになったね、頑張ったね」と頭を撫でて貰いたいのだ、忠犬ハチ公の私としては。
全身がだるい。体のあちこちが痛い。水曜日の筋肉疲労は相も変わらず強烈だ。
本日の稽古はシンドウ・ミンダー。正確にはシンドウ・ミンダーのショート・バージョン。新しい踊りである。
午前中のクラスが終わって、先生を待っている間、余程疲れていたのか、風邪気味なのか、壁にもたれて座ったまま眠ってしまっていた。
「寝てたの?」と訊かれ、「ちょっと疲れてるのかも・・・・」と答えると、「体調悪いの?大丈夫?踊れる?」と心配はしてくれたが、ここで手加減をしてくれるほど先生は甘くはない。
シンドウ・ミンダーの振り付けも今まで通り、きっかり一日で習い終えた。
「調子が悪いなら無理しないで。電話を掛けてくれればいいことだから、こういう時はこれから、稽古を休んでもいいんだからね」とも言ってくれたのだが、「左右8回のべーシュエが終わった後、レッナウッピッが入るでしょ、あれ本当は、カビャーロッで踊るのと同じように、肩と膝を着けるんだよ。アマ、調子が悪いから言わなかったけど」とも言われてしまった。
言われた以上、と言うか、聞いてしまった以上、ここで手を抜いては女が廃る。いや、女はどうでもいいが、私が廃る。
気合を入れ直し、基本通りにレッナウッピッを踊って見せると、「そうそうそう。バディータは軽く踊ることが多いけど、シンドウ・カの振り付けはカビャー・ロッと同じのが多くて簡単でしょ。簡単だけど、その分、きちんと踊らないと綺麗じゃない。レッナウッピッだけじゃなくて、アヨウッレッもジンヨォダウンレッピッも同じだよ。ちゃんとアコェ・ジン(基本姿勢)で踊ってね」と満足気に頷く先生。
膝が軋んで思わず、「いてててて・・・・」と呻き声が洩れたが、しかし、墓穴だろうが何だろうが、やってやるとも、やって見せようじゃないの。
だが、まあ、こんな感じで、気力だけは十分なので気持ちは先走るのだが、残念ながら脳と体が付いては来ない。
やりたくても出来ない事だらけのミンダー・アカ、シンドウ・ミンダーもその例には洩れず、オリジナルのエンディングはジャンプしながら一回転し、ストンッと床に座る「ミンダー落ち」だが、先生が私のレベルに合わせて変えてくれた振り付けは、床を転がる決めポーズである。
床を転がって決めポーズを取るパターンも「落ち」と呼ぶようだが、エンディングに限らず、ミャンマー・ダンスではターンはあまり使わない代わりに床をゴロゴロと転がる振り付けが多い。
これは舞台設営の違いから来る演出の違いのような気がする。
伝統的なザッ・ポェのステージはそんなに高さがないし、地面に座った観客との距離も近いので、目の前で回転するなら、寝転んだ方が上下の幅が出てインパクトがあるし、観客との距離がより縮まる。
跳び上がったかと思えば(これが半端な高さではない)床をゴロゴロと転がって、呆気に取られて見ていると目の前にミンダーの顔が来て、至近距離でにっこりと笑い掛けられたりするのだから、ハートをギュッと鷲掴みにするオイシイ演出なのだ、これは。
この床をゴロゴロと転がる振り付け(略して「床ゴロ」か)だが、転がり方には幾つか種類がある。
シンドウ・ミンダーのエンディングは肩から転がる。6拍の短いアピェーハンラとのコンビネーションである。
ターヤ・ラパのエンディングも床を転がるが、こちらは基本型と全く同じで、16拍のアピェーハンラと腕から転がるもののコンビネーション。
サゴォワインは腰で転がるし、一度しかやったことはないが、でんぐり返し様のものもある。
右に転がり、左に転がり、ジィ~ン!でフィニッシュの振り付けは、王道なのか、よく見るエンディングだが、この「床ゴロ」、見た目はどうと言うこともないのだが、やってみると、・・・いや、やってみてもどうと言うこともないのだが、でも、体中が痣だらけになる。
シンドウ・ミンダーは右肩から床を転がるので、右肩と、そして何故か左肘に擦り傷付きの青痣が出来ていた。
腰で転がれば腰に青痣が出来るし、腕を着いて転がれば腕に痣が出来る。「ミンダー落ち」をすれば足首に青痣が出来、膝は常に痣になっているので、ラウェイのキックで出来る脛の痣を合わせると、もう、比喩でも大袈裟でもなく、体中、特に足は、何処も彼処も痣だらけである。
打ち身は痛むし、体がギシギシするのでストレッチを入れていたら、「疲れてるとは思うけど、来月からは彼(お兄ちゃん先生1号)に稽古を頼むから、今日中にフレームだけは終わらせておかないと。もう1回踊れる?」と先生。
勿論、私に否はない。だが、この「もう1回踊れる?」、その後、何度も繰り返された。
勿論、私に否はないのだが、しかし、新しい振り付けを入れると、心太のように、古い振り付けが零れて行く。
疲れもあるが、来週からは先生がいないと思うと何処かしら緊張が弛むのか、自分でも集中力に欠けていると思う。
その上、まだ決定ではないそうだが、先生、政府の奨学金で韓国の大学へ2年半くらい、コレオグラフィ(Choreography)の研修に行くかも知れないと言う。
「はっきりしてなかったから、まだ、アマには言ってなかったけど」と言っていたが、そう言えば、申請を出しているという話は以前にも聞いている。その時は気になっていたのだが、その後は忘れてしまっていただけの話である。
その時の申請が受理されるかどうかが12月に判るらしい。受理されれば先生は、早々に韓国に赴くことになるのだそうだ。
衝撃の事実に動揺して、余計に振り付けが覚えられない。
先生のことだから、代わりの先生はちゃんと紹介してくれると思うが、何だかもう、これからどうすりゃいいんだと、迷子の気分である。
昨日、この先生について行こうと決めたのに、今日、もう、サヨウナラの話とは、「豆狸だしなぁ」などと我が儘を言っていたから罰が当たったのか、それとも、彼は私の本当の師匠ではありませんよという天の啓示なのか・・・・・・・・
ところで、この研修の話で始めて知ったのだが、先生の専門は踊りではなく振り付けなのだそうだ。
それでね、成程ね、だからいとも簡単に、私のレベルに合わせて振り付けを変えてくれちゃう訳ね、と納得が行った。
4、5回、或いはもっと少ない回数でも、試してみて私が踊れないとなると、先生は直に振り付けを変えてしまうのだが、実は私、そうやって易しい振り付けに変えられるのが嫌いである。
出来もしないくせに癪に障って、「いつか絶対、オリジナルより難しい振り付けを踊れるようになってやる!」と、見果てぬ野望を抱いてしまうのだが、シンドウ・ミンダーは先生が急いだせいもあって、三ヵ所も振り付けが変わっている。
そんなこんなで後半はちょっとヤケ気味、カラ元気で体力を使い切ってしまった今日の稽古だが、不思議なもので、こんな状態でも踊りの練習をするのは純粋に楽しい。
カビャー・ロッで習った型はこんな風に組み合わせるんだと興味深いし、どうやって踊っているのだろうと感心して観ていたミンダーの踊りが、一つ一つ、ゆっくりと解けてくるようで感慨も深い。
「アマ、凄く疲れてるみたいだし、今日はもう、お終いにするね」と、珍しく時間通りに稽古を終えた先生だが、「でもアマ、踊ってると楽しそうだよね」と付け加えて笑った。
「カビャー・ロッとバディータの3曲、全部、綺麗に踊れるように頑張って。特にマガイ、絶対に忘れないで。マガイはアマに好く似合うから、衣装着けて、アクセサリー着けて、人前で踊って見せられるといいね」
そう帰り掛けに言われて、先生がマガイに拘っていた理由が解った。
だから、あんなにしつこく・・・、いえいえ、一生懸命教えてくれたのかと嬉しかったし、改めて頑張らなきゃと思った。
ミャンマー・ダンス、この調子では、まだまだ止められそうにない。自分でも納得の行く踊りが踊れるようになるまでには、少なくとも数年が掛かりそうだ。
先生は韓国に行ってしまうのかも知れないが、習い事に関しては気の長い私のこと、きっと先生がミャンマーに戻る頃までなら、ミャンマー・ダンスを続けているに違いない。
その頃には違う先生を師匠と呼んでいるのかも知れないけれど、出来ることならもう一度、先生に踊りを見て貰いたいと思う。
何せ、「綺麗に踊れるようになったね、頑張ったね」と頭を撫でて貰いたいのだ、忠犬ハチ公の私としては。
Posted by ASU at 01:05│Comments(0)