2014年11月27日

サンドゥ・チェイン4

11月19日(水)先生の機嫌;晴れ

 珍しく私の予想を裏切り、先生がスタジオへやって来た。サンドゥ・チェインの続きをするからなのか、久々の稽古で気後れするからか、ニャン先生をお供に連れている。
 ・・・・・・・約2ヶ月振りに見る先生は相変わらず、・・・何と言うのだろう。お豆さん?茶豆さん?やっぱり微妙に可愛い。
 どこが可愛いんだか、どうして可愛いんだか、それはよく解らないのだが、・・・いや、それ以前に、これを可愛いと思う自分は大丈夫なのかと不安にならないでもないが、それでも私の大事なお師匠様である。久しぶりに会えて、ほんわかと嬉しい気分になった。
 ASEANサミット関連の行事で唯でさえ忙しいのに、同僚が急に亡くなって、先生、メイクから何から、一人で請け負う事になって物凄く大変だったらしい。
 だがそれは、私には端からどうでも好い事、「はいはい、それは大変でしたねぇ」とにこやかに頷き、さっさと先を促した。

 稽古に入ると先ずは、サンドォ・チェインの途中までを踊ってみる事になった。
 ニャン先生が一緒に踊ってくれたので何とかなったが、もし一人で踊っていたら、あまりの酷さに、折角覚えた振り付けが全面的に変更になっていたかも知れない。
 気になる先生の講評はと言えば、「ラー・バ・デー(綺麗ですよ)」。そして、「ダベメ、ビート・マー・ネー・デー(でも、拍子が間違ってます)」。
 ・・・・・・・拍子が間違ってるんなら綺麗も何もないだろう。優しいんだか、遠慮してるんだか、有難いとは思うが、でも、傷口に塩を塗る様な気遣いである。
 「アマ、他の曲とは違ってこの曲、まだ、よく解ってないよね?そうでしょう?」
 ・・・・・・・悪かったね。他の曲も同じくらいに解ってないよ。
 傷口に胡椒まで擦り込まれ、「そうですね」と苦しい笑顔で頷く私。
 「心配しないで。ちゃんと踊れるようにしてあげるから」と慰められ、先生に依る最後のパートのフレーム・ワークが始まった。
 「じゃ、ついて踊ってみて」と、示されたお手本は以下の通りである。

 アトォ(繋ぎ)のアヨウッ・レッを8拍まで踊り切りって両手を収めながら①同時に右膝立ての立膝で右を向く。②左のジィンヨォ・ダウン・レッ・ピィッをしながら中腰で立ち上がり、同時に右脚を前に出し、爪先を伸ばして床に着ける。上体を床と平行になる様に倒し、顔は伸ばした足先を見る。③もう一度右膝立ての立膝に戻り、④両手を重ねながら頭上へ上げて交差させる。同時に上体を逸らし、左膝を折って後ろで上げる。⑤一旦正面に向き直り、間髪入れずに⑥⑦⑧続けて左を向いて同じ振り付けを左右を変えて繰り返す。

 「は?え?何?・・・ちょっと待って、もう一度いいですか?」
 先生について踊ろうとして、この台詞を何回繰り返しただろう。この振り付け、左右1セットで8拍なので、速過ぎて何が何だかさっぱり判らない。
 何度か試してみて、先生、諦めたらしく、すぐさま振り付けが変更になった。

 アヨウッ・レッを8拍まで踊り切り、①両手を収めると同時に両肘を後ろへ引いてしゃがむ。②中腰で立ち上がりながら右を向き、同時に右脚を前に出して爪先を伸ばして床に着け、左のジィンヨォ・ダウン・レッ・ピィッ。上体を倒し、顔は伸ばした足先を見る。③もう一度両肘を後ろへ引いてしゃがむ。④両手を重ねながら頭上へ上げて交差させ、同時に上体を逸らし、左膝を折って上げる。⑤一旦正面に向き直り、両肘を後ろへ引いてしゃがむ。⑥⑦⑧続けて左を向いて同じ振り付けを左右を変えて繰り返す。

 立膝が屈伸に変わっただけである。余計にしんどい様な気がしないでもないが、それでも膝の左右を考えずに済むだけ楽になったとは言える(その分見栄えは劣る)。
 ニャン先生は残り1分は緩い振り付けにすれば好いと言っていたが、蓋を開けたら今までで一番苦しい振り付けが出て来た。
“2分半踊った後でこれですか?”と、暗澹たる気分になる。
 「難しいのはこれだけ。これが出来れば後は簡単だから」
 そう言われても簡単だった例はなく、先生の励ましが虚しく響く。

 立膝のジィンヨォ・ダウン・レッ・ピィッをべー・シュエで左右各4回。立ち上がりながらカポン・カーリエ・シェー・トゥッ・テッ4回、左のジィンヨォ・ダウン・レッ・ピィッを後ろへ下がりながら4回。

 これが簡単な振り付けなのかと言えば、「どれも踊った事のある振り付けばかりでしょう?」との先生の言葉通り、新たに覚える必要はなく、特に悩む必要もなく、簡単と言えば簡単である。ただ、体力が保つかどうか、踊れるかどうかは別問題だが。

 8拍で一周のアピェー・ハン・ラッを左右1セット。メー・トォーのスキップ4回、シィー・トォン・ジェっを左右交互に4回。左斜め前へメー・トォーの交互腕伸ばしで4拍、サンドォ・テイン・レッの変形バージョンで右斜め後ろへ下がること4拍。右膝を上げ、左のジィンヨォ・ダウン・レッ・ピィッで反時計回りに腰を落として回り、足を踏み変えてアヨウッ・レッで落ちる。

 「ダベボー、ピードヮビー(これだけだよ、終わっちゃった)」
 ・・・・・・・これだけってどんだけ!?
 無理に浮かべた笑顔が引き攣っていたのが自分でも判った。或いは、笑えていなかったかも知れない。

 それでも1曲分の振り付けが固まったので踊り込みに入ったのだが、脳の老化か、気力の低下か、振り付けが覚えられなくて悪戦苦闘である。
 才能のなさとは敢えて言うまい。しかし、マラソン・ランナーは努力でなれるのに対して、スプリンターは生まれながらにしてスプリンターなのだと言う。舞踊はどちらの部類なのだろうかと、絶対に(?)考えない方が好い疑問が脳裏を過ぎる。
 ニャン先生ほど気の長くない先生だが、それでも、後半部分だけでも5回以上、頭からの通しは3回以上踊ったと思う。
 こうして、どうにか先生について踊れるようになり、ようやく、サンドゥ・チェインのフレーム・ワークが終了した。

 「来週は滑らかに踊れるようにするからね。今日の振り付けも、それまでの振り付けも、ちゃんと見てあげるから心配しないで。曲が解ってくれば、もっと楽に踊れる様になるよ」
 稽古の終わりに先生が励ましてくれたが、いつにも増して熱の入った励ましに、“そんなに酷いですか?”と逆に不安になる。
 「アマはビートが解ってない。曲を理解しなきゃ駄目だよ。シィー・ワーの解らない人は誤魔化せても、見る人が見れば直に判る。ビートを外した踊りは全然綺麗じゃない」
 ・・・・・・・傷口に青唐辛子。ああ、もう、全然解らん!!
 ミャンマー・ダンスのリズムを理解するためには、チャウ・ロン・トエ(ミャンマーの太鼓の一種)を習うしかない。そう思い詰める私であった。



Posted by ASU at 00:49│Comments(1)
この記事へのコメント
「来週は滑らかに踊れるようにするからね。
Posted by ゼクシオ ゴルフギア格安 at 2014年12月04日 11:59
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